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やがて王は28歳の誕生日を迎えた。
いよいよ跡継ぎ問題に躍起になった家臣たちは、国中をまわり目ぼしい女たちを次々と謁見させた。
もう、見合いはやめて欲しいと王は告げたのだが、
「貴方様の血は、決して絶やしてはならない血なのです。お願いですから跡継ぎのことも考えてください。」
と、王の話に耳を傾けてもくれなかった。
唯一、王の話を真剣に聞いたのは、マリアだけ。
「マリアよ……私は家臣が連れてくる女と結婚するのが宿命なのか? 私はそうする運命なのか?」
うんざりとした様子の王を見て、マリアは少し言葉を選んだ。
「反逆罪に問われるかも知れませんので、多くは語りません。私にも家族がおります。陛下にどうこう言うつもりはありません。私が言えること、それは……。」
マリアは、村を出る日の王の表情を、しっかりと覚えていた。
あの時の王は、まぎれもなく『人間』だった。
「一度きりの人生。人に導かれ、不本意な生き方をしていくことを、陛下はお望みですか?」
マリアは、それだけ王に告げた。
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