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その翌日。
王は早速城を出て、山奥の村へ向かった。
向かった先は、自分い優しく接してくれた村娘のところ。
「陛下……どうしたのですか? 何かお城を飛び出してくるようなことがおありでしたか?」
娘は心配そうに王の顔を覗き込む。
王は、自分のことをいつも心配してくれる、そんな娘のことをもう想わずにはいられなかった。あの狩りに出た日、空腹に耐えかねたときのあの夜から。
「私の、妻になって欲しい。」
飾った言葉など出てこなかった。
王は、ありのままの言葉で、素直に自分の気持ちを伝えた。
「そんな……私などが王様のお妃などに……滅相もございません、私のような学のない、辺境の村娘など……。」
当然、娘は恐縮し躊躇った。
しかし、王は引かなかった。
「私はもう、王ではない。身分に差などないのだ。今は一人の男として、お前を迎えに来た。たとえ絶世の美女や高貴な者をあてがわれ、妻としても、私の心は満たされなかったであろう。お前が良いのだ。私はお前と添い遂げ、想い合い、笑い合いたいのだ。」
人生で最初で最後の、国王のプロポーズ。
娘はその想いに打たれ……。
「きっと、これまでの生活よりもずっと不自由になると思います。貧しくなると思います。それでも良いなら……私が一生陛下を支えます。富はなくても、愛が溢れる家庭にします。それで良いなら……。」
娘は微笑んで王にそう答えた。
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