渡り廊下の死闘

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渡り廊下の死闘

 ノーマンが古代魚の背中を駆け出したのを見て、敵兵もただ見守っているだけのはずは無い。  敵兵も我先にと古代魚の背中に乗り移る。ただし、細い古代魚の背中は一人分の足場しかない為にノーマンと一騎打ちになるしかなく、力任せ的な剣の振るい方でも一般兵などよりも数段上の腕前の彼の敵にはなり得なかった。  ノーマンに襲いかかった敵は、次々、と言っても二名だけだが、彼等は簡単にいなされた。  気絶して転がって細い魚の背から落ちたものが一人、ノーマンの剣に放り投げられる形で魚の背どころかリボンの外にまで飛ばされて下に落ちたのが一人。  落ちた敵兵は落ちた場所で地雷の餌食となり、渡り廊下は人が爆発した事を示す真っ赤な円が二つ描かれた。  ノーマンは大きく舌打ちをした。 「お前ら! こんな死に様は嫌だろう! そこで待っていろ!」  しかし、敵兵の中の一人、甲冑を付けていた唯一人が、重い甲冑をガシャガシャと音を立てながら無言で魚の背中に乗り込んできた。  私はこれはいけないと詠唱を唱え始め、敵の兵士達は勇敢だった彼等の上官らしき甲冑に賞賛の声を上げ始めた。 「ば、ばんざい。ああ、ゼッペウス隊長」 「ゼッペウス様、ばんざい!」 「やってください! 隊長!」  ゼッペウスと呼ばれた甲冑の大男は部下らしき敵兵達に喝采を浴びながら、ガシャンガシャンと音を立てながらノーマンに近づいてきた。  ノーマンは敵の様子に剣を構え直す。 「名前を。俺はノーマン・アンティゴア。いざ、尋常に勝負だ!」  しかし甲冑男は名前を名乗るどころか、ノーマンを通すものかというように両腕を大きく横に開いただけだ。  いや、それは鬨の声を大きく上げたのだ。  ああ、私は詠唱が間に合わなかった! 「キシャアアアアアアアアアアアア」  人ではない叫び声をあげる人では無かった甲冑に、敵兵の全員が青ざめて静まり返る中、私は人でなしでも人でしかないノーマンに大声をあげていた! 「ノーマン逃げて! リヴァイアさんは煩いのが大嫌いなの!」  私の声を合図にしたかのように、リヴァイアから怒りの鉄槌が繰り出された。私の詠唱が間に合わず、甲冑男の行動をキャンセルできなかったばっかりに!!  彼女の中には彼女が飼っている巨大な線虫が大量にいる。  それらの三匹がぞわっとリヴァイアの怒りに呼応し、彼女のエラから飛び出したのだ。そしてそのうちの一匹が甲冑姿の化け物に特攻し、甲冑男を下から上へと跳ね上げる様にしてくし刺しにした。  巨大寄生虫にくし刺しにされた甲冑男は渡り廊下の天井にぶち当たり、そのまま寄生虫と一緒に床に落ちて、そして、地雷の餌食となった。  寄生虫の白い体液と甲冑男の腐った赤い血が、床にどろりとぶちまけられる。  それで、ノーマンは?  ノーマンは何事も無いようにリヴァイアの背骨の上に立っていた。  いや、立っていない。  彼は要石だった青い石の精霊に守護されて、それだけでなく青い炎のようなオーラまで纏ってほんの少しだけ浮いているのだ。  巨大な寄生虫は彼の足元にだらりと力を失って横たわり、ずりっと音をさせて床に落ち、それらも二つの白い水たまりを作った。  私以上にたじろいだのは敵兵の方である。 「さあ、道を開けろ。君達の隊長はとっくの昔に殺されていたようだ。俺達はこの城を根城にした魔物を倒しに来たアンティゴアさまご一行だ。復讐を望むならば、俺達に今すぐに道を開けるんだ!」  まあ、勝手に自分の名前をパーティ名にするなんて!  私はノーマンの無事を喜ぶよりも、彼とパーティは組まないぞ、と思った。  破壊の三角(トリアングルムディオティレニス)は、私達三人で決めたパーティ名だった。
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