あなたは幽霊を信じますか?

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あなたは幽霊を信じますか?

「運転手さん、あなたは幽霊がいると思いますか?」  その質問が、車内の静寂を破った。うら若き女性が不安げな声で問いかけてきた。彼女は一人暮らしの大学生であると、これまでの会話で分かっている。  私は幽霊の存在を信じていない。多くの「幽霊現象」は、見間違いや勘違いであることがほとんどだ。私は首を振って否定する。 「そうですよね。私も少し前まではそうでした。でも……」  女性はそこで言葉を切る。どうやら、彼女には幽霊を信じざるを得ない事情があるようだ。 「信じてもらえないでしょうけど、部屋の窓がいつの間にか空いているんです」  家の窓が気づかないうちに開くというのは、確かに不安を引き起こすものだ。幽霊の仕業と考えるのが自然かもしれない。 「鍵をかけているのに開くんですか?」 「いいえ、マンションの上の方に住んでいるので、鍵はかけていません」  私は彼女の一人暮らしが危険だと感じつつも、マンションの高層階に住んでいるならば、おそらく経済的に余裕があるのだろうとぼんやり考えた。 「運転手さん、聞いてますか?」 「すみません、他のことを考えていまして。続きをどうぞ」  女性は頬を少し膨らませてから話を続ける。 「私、不思議に思って窓を見張っていたんです。まるで警察官のように」  彼女がパンを片手に見張っている姿を想像する。もしかしたら、ドラマを見過ぎたせいかもしれないが、その光景が少しおかしく感じた。 「そしたら……」 「やはり、窓が開いた」  私は彼女の言葉の続きを引き取って言う。 「そうなんです。やっぱり幽霊の仕業としか説明がつきません!」  彼女には失礼かもしれないが、幽霊の仕業とするのは安易だと感じた。科学的な説明がつかないか考えてみる。
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