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しかし、私はその背後に潜む別の可能性を考え始めた。あまりにもこの状況ができすぎていると感じるからだ。窓際の席が景色が良いからといって、すべての女性がそこで落ち着く理由にはならないように思えた。
「お客さん、温度は適温ですか?」と私は何気なく尋ねる。
「ちょうどいいですよ。私は暑がりなんで、夏は冷房をガンガンかけるんですよ」と男性が答える。彼の言葉を聞きながら、先ほどの話の一部が頭の中で繋がり始めた。
ふと、女性たちが窓際に座る理由が見えてきた。もしも、そのカフェの窓際の席が日光で温かいのだとしたら、寒がりの女性たちがわざわざその席を選んでいる可能性がある。女性は寒がりが多いから。暖かさを求めて女性たちが集まるというのは、ひょっとしたら正しい推測かもしれない。
しかし、この可能性を男性に伝えることはしないことに決めた。せっかく彼が喜んでいるのに、その気持ちを壊すようなことはしたくない。彼がウキウキしている姿を見ていると、それを大切にしたいと思ったからだ。
真相は分からない。しかし、筋が通った仮説にたどり着いた私も鼻歌を歌った。タクシーが目的地に着くまで、車内は鼻歌が絶えることはなかった。
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