開かないドアの謎を解け!

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開かないドアの謎を解け!

「本日、13時過ぎに商業施設でエレベーターが止まるという事故がありました。乗客はすぐに救助されたため、重大事故にはなりませんでした。小谷さん、この事故について……」  ラジオから流れるアナウンサーの声に耳を傾けながら、私はふと思う。今回の事故は幸いにも大事には至らなかったが、もし閉所恐怖症の方が乗っていたらどうなっていたのだろう。考えながら、そもそもエレベーターを避けるかもしれないと納得していた。  その時、後部座席から「密室空間、か」とひとりごちる声が聞こえてきた。どうやらこのお客さんは閉所恐怖症の可能性があるようだが、個人情報に踏み込むわけにもいかず、私の興味だけが募る。 「なあ、あんたは密室を経験したことがあるか?」と、髪を金色に染めた若い男性が突然話を切り出してきた。そういえば、私はそんな経験はない。自然に首を横に振った。 「そうだよな……。俺は経験があるぜ」と男性は、まるで自分の話を聞いてもらうのを楽しんでいるかのように続ける。 「密室を、ですか?」と、私はさらに興味を引かれた。  密室という言葉には探偵としての好奇心を刺激される。男性が話を続ける前に、こちらから質問するのは控えた方がいいだろうと思った。 「それも家の中で、しょっちゅうあるんだ。室内のドアが開かないことがあってな」と男性が語り始めた。  彼の話す内容は密室のミステリーとは少し異なるが、非常に興味深い。ドアが開かないという現象が、どのような背景を持つのかに引き込まれる。 「ドアは押して開けるタイプなんだが、押しても反応がないんだ。だが、しばらく放っておくと開くんだよ」と彼が続ける。  その話を聞いて、ドアの仕組みに関して何か理由があるのかと思い始める。引いている可能性はないと確信する。 「いくらボロアパートに住んでいるとはいえ、ドアの立て付けが悪いわけでもない。ほんと、不思議だ」と男性が言う。  金銭的に苦労していることは、服装から予想はしていた。 「お客様、建物が古いとおっしゃいましたね。具体的にはどのくらい古いのでしょうか?」と、私は興味を持って尋ねる。  若者は腕を組みながら考え込み、「築30年はありそうだな」と答える。その情報をもとに、私は次に話すべきことを考えた。 「それなら、一つの可能性を提示できます」と私は話を切り出す。
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