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ある日、特別な魚を仕入れた。ウッカリカサゴだ。それも特大の。三・二キロの大物だ。開店前に、その赤く大きな魚を目の前に、美月さんは言った。
「これは立派なカサゴ、じゃなくて、ウッカリカサゴですね!」
「おや、分かるのかい?」
これまた驚かされた。学者ですら「ウッカリ」カサゴと見間違えてしまうその魚を、彼女は見分けたのだ。
「正直、一瞬迷いましたよ。でも、ほら、ここ。側線付近に白い斑点があるし、ボヤけてないしっかりした斑点。これは間違いなく『ウッカリカサゴ』です」
もうこれには「さすが」の一言だ。素晴らしい。百点満点の回答だ。
「でもわたし、こんなに大きなウッカリカサゴって見たことも食べたこともないです……」
彼女はそう言って、キラキラした目でこちらを見つめてくる。何が言いたいかは分かる。それを察して俺は言った。
「後で、少しだけな」
それを聞いて彼女は「やったー」と飛び跳ねた。後でそれでまかないを作ってやる事にした。もちろん商売なので、お客さん優先ではあるが……。
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