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ガラッという音と同時に、美奈と目が合った。
美奈を見た瞬間、異変に気づいた。
明らかに、いつもの美奈じゃない。本当の美奈は、こんなんじゃない……。
そんなことを考えていると、美奈が小さく呟いた。
「凪……、来てくれてありがとう……」
必死に作っている笑顔の裏には、隠しきれない悔しさと悲しさが込められていた。
いつものような、天真爛漫な笑顔はどこにもない。
何もかも病気のせいだろう。
病気のせいで、美奈は美奈でなくなってしまった。
なんて言えばいいの……?
私はこんな状態の美奈に、なんて声をかけてあげれば良いの……?
「美奈……」
思わず、そう呟く。
すると美奈は、悲しそうな顔をして、小さく言った。
「ごめんね……、凪……。病気は、ステージIVの癌なんだ……。私、どんなに頑張っても、あと半年しか生きれないんだ……凪と、もっと一緒にいたいのに……、ごめん、ごめんね……」
その言葉に、私は言葉を失った。もう、何も言うことができない。
美奈は悪くなんかない……、全て、病気が悪い。いや、誰も悪くなんかない。
しばらく経って、私はやっとのことで声を出すことができた。
「……美奈は、何も悪くなんかない……」
思わず涙が溢れてくる。
駄目だ、泣いちゃ駄目だ。今一番辛いのは、美奈なんだから……
そんな思いも虚しく、私の頬に大粒の涙がこぼれた。
それが分かった瞬間、私は大泣きした。
美奈も、「ごめんね……、ごめんね……」と、呟きながら泣いていた。
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