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『アナタ、雨の中大変だったわね。でも、これからは自分でなんでもやってね。私はもう何もしないから笑』
「なぜだ...!どこに隠れているんだ!ふざけたことしないで出てこい」
『ふふふ笑 ここにいるじゃない笑…ここに』
すると、一体の人形がウインクして見せた。
白いツバの広い帽子を被って、フリルがたっぷりついたドレスを着た青い目の人形だった。
「ゆ…由香…なんで人形に?嘘だろ?」
「嘘じゃありません。私は生贄になりました』
今の時代、生贄とかないでしょ。
何を冗談を言っているのかと思いながら抱き上げた。
「良いから人間に戻ってこい。戻る方法あるんだろ?」
『ありますけど、どうして戻ってきてほしいのです?』
「それは…一緒に住んでる彼女だからに決まっているからだろ」
由香らしき人形は、また笑ってきた。
僕をバカにしているのかと思い、由香と名乗った人形を投げるように戻すと、彼女は怒り出し、他の人形たちも怒り始めた。
『ご主人様を呼びましょ』
『ただいま、ご主人様に電話を繋ぎますので、そこにいてくださいね』
動けない人形たちが何を言うのかと思ったら、僕のスマホに見知らぬ番号から電話が。
電話に出ると、ドールハウスのマスターからだった。
「康太様、おかえりなさいませ」
「た…ただいま。マスター!彼女から生贄になったと聞きましたよ!?」
すると、マスターは一呼吸おいて、こう答えた。
「あなたは、他の人形に浮気をしていましたね?」
「他の人形?確かに、ここにいる人形たちは、みんな僕の大切な家族だ。だけど、浮気なんて…」
すると、マスターは、僕が休みの日にドールハウスにずっといて、彼女の相手をしなくなったことを指摘してきた。
確かに、同棲をはじめて安心したせいか、食事や遊びに行くことが減ってしまった。
由香は人形たちに嫉妬し、自分の魂と引き換えに人形になったそう。
そうすれば、他のお人形と同じように接してくれると思ったからだ。
『私はずっと、ここであなたの帰りを待っています…』
「まあ、康太様は懲りずに何人の女子様を、泣かせ魂を生贄にさせてきたのでしょうかね」
マスターは呆れながら、電話を切った。
それと同時に部屋のカギが開いた。
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