プロローグ

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b391a713-76c1-4981-9c63-a09d20a331cf ブルームーン。    それはカクテルの名前。     あなたが私に作ってくれた     たった一つの思い出。 10年前に偶然、旅先の函館で入ったショットバー。    そのカウンターにいた私より     ひと回りは上に見えた      無精髭が印象的なバーテンダー。 名前も歳も個人的なアイデンティティなんて     一つも知らずに恋心だけを残した人。 「旅行ですか?」 「ええ」 薄暗いバーのカウンターで    ジャズの響きの中に溶け込む声。 「マティーニをお願いします」 「かしこまりました」 d79471a2-25f1-4887-84d2-eeddd639575f 煙草に火をつけて(ふか)した白い魂の向こうで     微かに微笑んだ気がした。 函館は初めてだし     記憶の片隅にもないけど      私のことを知ってるのだろうか?       そう思わせる微笑みを見せた彼。
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