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「ブルームーンってご存知ですか?」
「いえ、何?月?」
「満月ってひと月に一回」
「月の公転周期はほぼ30日ですもんね」
いつしかカウンターに両肘をついて彼の話に耳を傾けていた。
「そうです。正確には29.5日。その誤差が積もって月の最後の日に二度目の満月が出ることがある」
「それが?」
「ブルームーン。奇跡の月」
ホテルに戻ってシャワーの湯煙の向こうに
自分の人生の終わりが見えた気がした。
バスローブのまま小さなテーブルの横の椅子に腰を下ろし煙草を蒸すと彼の言葉が蘇る。
「奇跡の月?」
「はい。その月だけ青白く見えるんです。その月に願いを込めると、その願いは叶うのだと太古の人は信じていたそうです」
「私の願い叶うかしら?」
「きっと」
「そう?良かった」
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