第一章『親の居ぬ間に』

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 何だか慌ただしかった一日が終わり、私は玉彦と私室で二人寛ぐ。  枕を二つ並べて、お布団でうつ伏せで横たわり、今日は疲れたねーと言えば玉彦も無言で頷き同意する。 「今日から緋郎くんが名もなき神社の神職修行を始めるって言ったじゃない?」 「うむ」 「結構様になってたわ。叔父さんの名の無き神社の口伝も拝聴してきたけど、新しい発見は特になかった」 「そうか。神社の口伝であるが故、神守の眼については別物なのであろう」 「やっぱり自力で頑張るしかないのよねぇ。あぁどうして私は日本人なのに日本語きちんと読めないんだろ」  理系ではなく文系のはずなのに。 「あ、そうだ。話は変わるけど、明日の夜っていうかお祭りの夜どうする? 私は三日間ともお屋敷に居る予定よ」  鈴白神社の夏祭りは大袈裟ではなく本当に三日三晩夜通しで行われる。  夜中は出店や的屋は閉まるのだが、それと入れ替わりに神社の境内が宴会会場となって賑わいを見せる。  お祭りの三日目なんて昼間っから境内で呑んだくれている村民が多数でカオス状態になっているのは毎年恒例だった。  神社で呑んだくれるだなんて神様に失礼じゃないかと思われなくもないが、ここ数年に一度、その呑んだくれどもの中に鈴白神社の祀神である神大市比売(かむおおいちひめ)が紛れているので、(ばち)は当たらないだろう。  玉彦は静かに目を閉じてから仰向けになった。
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