第一章『親の居ぬ間に』

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 かなり以前、蔦渡くんは私に教えてくれたことがある。  天狗は生まれた時から天狗ではなく、成人を迎える前に選ぶのだと。  そして五村の天狗は完全なあやかしではなく、半人半妖だとも言っていた。  正武家はそんな半人半妖の天狗が五村に存在しているのは何となく把握してるんじゃないかとも言っていた。  そんな天狗の彼らの間では正体を明かすことを人間の伴侶以外には禁じられているので、私は例外中の例外だったりする。  ちなみに澄彦さんは私の男子の同級生の中に天狗がいるというのを気付いてはいるけど、全く気にしていないようだった。  今回一太くんが私のところへ来た理由は大体想像がつく。  世間一般だったら十八や二十歳で成人を迎えるけど、天狗常識では正武家のように早目の成人を迎えるのだろう。  小学生の頃から、一太くんのお誕生日会を十月の半ばくらいの連休に開いて、天彦は泊まりがけで祝いにというか遊びに行っていたので誕生日が近いのは確かだし、成人前に蔦渡くんが息子に自分の一族について話をしたのだろう。  それでまぁ色々と話しているうちに、私という例外中の例外もいると知って、一族以外の話も聞きたいか相談したいと思って来てくれたのだろう。  私は、一太くんが私のところへ来てくれて本当に良かったと思った。  事情を知っても尚、友人関係でいられるという(あかし)があるから。  そして事情を全く知らない玉彦とも蔦渡くんは友人関係を維持している。  だから、ただ本当に、私からすれば蔦渡くんは人間にも天狗にもなれるの友人なのだ。  五村のあやかしたちが問題を起こさなければ不可侵のお決まりがあるし、この先天狗の姿で天彦と対面する場合があっても敵対することはまず無い。  そんな話を一太くんとして、彼はようやく落ち着きを取り戻した。
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