第一章『親の居ぬ間に』

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 夜中三時を過ぎた頃。  隣で眠っていた玉彦が飛び起きた。  本当に、飛び起きた。  むくりと緩慢に起き上がるのではなく、薄手のタオルケットを跳ね除けて起きると同時に立ち上がっていた。  そして閉められていた縁側の障子を睨む。  私も釣られて起き上がり、玉彦の寝間着の裾を引っ張った。 「どうしたの?」 「役目だ。出張る」  玉彦は簡潔にそう言って、誰も居ない廊下へ顔を出して誰かと声を掛けてから、部屋の明かりを点けて身支度を整え始めた。  白い着物に黒い羽織。  羽織が必要ということは外のお役目ということだ。  玉彦は着替えながら、同時に着替えていた私に説明をする。 「鈴白で禍が降って湧いた。希来里のあの時のように」 「えええっ!?」  希来里ちゃんのあの時って、確かこっくりさんが原因でってやつだ。 「またこっくりさんかな!? 大変!」  私が話ながら帯を締めていると、玉彦は首を横に振った。 「あのような比ではない禍々しいものだ。不味いことになった。流石に父上も関知しているであろう」  今年はまだ大酒飲みの神様は参加していなかったので澄彦さんは飲み潰れてしまっていないだろう。  普通のお酒なら澄彦さんは蟒蛇なのだ。
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