序 章

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「あぁっ! もうっ!」  五村道で一人声に出し、私はこれからの優先順位を頭の中で決める。  まずは名もなき神社。これは今日を逃すと光次朗叔父さんの口上を拝聴出来ないから第一優先。  それから鈴白神社で衣装合わせをしているであろう天彦と一緒に猩猩屋敷へ……駄目だわ。  天彦を連れ出すなら誰か稀人を付けなくては。  でも今、当主次代はお役目中で、稀人の手は空いていない。  確か多門が今日の昼には西からとんぼ返りして帰ってくると言っていたはず。  西での事案を速攻終わらせてほぼ日帰りでの帰宅だ。  じゃあ多門に連絡をして、お屋敷には戻らずに鈴白神社へ来てもらおうか。  猩猩の件に天彦を引っ張り出したらきっと玉彦はしかめっ面を作るだろうが、天彦だってもう成人の儀を終えて、お力もそれなりにある。  可愛い子には旅をさせよって訳で、させてみても私はいいと思う!  あとは、あとは!  と考えて、私の中である程度計画を立てたのだけれど、名もなき神社の用件を終えて、鈴白神社で天彦に事の次第を伝えたら、当主次代の許可を得ずに勝手に赴くのは罷りならんと首を横に振ったのだった。  こうして八月が始まるのだが、やはりここは五村鈴白正武家様の坐す土地。  一筋縄ではいかない怒涛の夏が始まるのだった。
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