第一章『親の居ぬ間に』

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 再び七月最終日。  夕餉の席である。  洸姫を除く四人はお膳を前にして、疲れ果てた顔をしていた。  当主次代は八月初めの三日間をお役目休みにするべくお役目を夕方過ぎまで詰め込んでいた。  この忙しさは年末に匹敵する忙しさであるが、そのお役目の内容はと言えばそれ以上のものが何故か揃ってしまっていた。  流石に五村外に出向くほどのものではなかったけれど。  天彦は鈴白神社であれやこれやと着せ替え人形になっており目が虚ろで、こんなことなら猩猩屋敷に行っていればと呟く。  正武家の男雛は玉彦以来だったので、雛壇担当の年配の女性たちはふんだんに振られた衣装の予算を余すところなく使い、私が鈴白神社に到着するとこれでもかと云うほど飾り立てていた。  それは女雛も同様で、今年選ばれた一つ下の学年の鈴白神社の一人娘もまだ午後も始まっていないのに疲れ果てていた。
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