第一章『親の居ぬ間に』

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 疲労困憊の四人を尻目に、唯一洸姫だけは明日に向けてワクワクが止まらない感じで元気だ。  洸姫は今日一日、親友の田村さんと村をぶらつき、お祭りの準備で賑わうあちこちを満喫し、お屋敷に帰って来てからはのんびりお風呂に入って、明日の宵の宮のお祭りに着ていく黒い浴衣の試着を香本さんに頼んで自分の姿にすっかりご満悦。  普通の子供のようにと玉彦も私も望んではいるが、ちょっとくらい台所を手伝っても良かったのではないかとも思う。  でも思い返せば私の初めてのお祭りの時もそんなに手伝った記憶はないので、洸姫の事は言えない。  夕餉の席ではそんな洸姫が今日の出来事を喋り倒す形で進み、私が猩猩の件を口にしたのは食後のお茶の時だった。  本来ならお役目などの不可思議な事案を洸姫に聞かせることはあまり良くないのだけれど、席を移すのも億劫で、それは玉彦も澄彦さんも同様だったらしく、話を止められることはなかった。
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