パーフェクトな運命

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昼休み、二人は屋上で朝の話の続き。 ひまりはパンを頬張って半信半疑。 「運命の出会いってさ、急に雨が降った時に傘を貸してくれたり、買い物袋から転がったオレンジを拾ってくれるとか?」 優月はお弁当を食べながら、占い雑誌を開いて見せる。 「だって、ここに書いてることが的中したの」 もともとはひまりが読んでいた雑誌に、今は優月の方が夢中だ。 それは昨日のこと。 星座占いのページ、優月の星座であるさそり座の欄。 1月のラッキーアイテムが『哲学の本』だったのが発端。 哲学について知識がなかった優月は、担任の国語教師に相談した。 「河本さん、哲学の本を読みたいの?」 勉強熱心な生徒だと先生は感激し、おすすめの本を教えてくれた。 「ニーチェがいいんじゃない? 『超訳 ニーチェの言葉』が読みやすいわよ」 「ニーチェ…?」 早速放課後、駅前の小さな書店に立ち寄った。 哲学書のコーナーで目的の本はすぐに見つかり―。 手を伸ばした時だった。 別の人の手が優月の手に重なったのだ。 慌てて手を引っ込めて、顔を上げると―。 そこにいたのは、髪は長めで銀縁メガネが知的そうな美少年。 グレーのブレザーで優月の学校の紺色の制服とは違った。 本はわずかに優月のタッチが早かったと譲ってもらえたが。 店員に確認したら裏に在庫があって、二人とも本を入手できた。 書店を出ようとした時、少年が追ってきた。 「あの…よかったら連絡先を教えてもらえますか? かわいいなと思ったんで…」 「え…?」 普通なら断るところ、その時は運命の力が働いたようだ。 震える手でスマホを取り出し、連絡先を交換したのだ。 名前は横尾慧、ケイくん。 優月と同じ高校1年生だった。 メッセージのやり取りが始まり―。 その日のうちにケイの強い希望で付き合うことになった。 ケイの誕生日は6月30日、かに座だという。 星座占いによると、さそり座との相性は抜群に良かった。 「じゃあホントに運命だぁ、すごいね!」とひまりが感心する。 運命…人に言われると、くすぐったい。 「でも、占い通りだとあたしたちは相性悪いはずだよね」 指摘されて、さそり座とふたご座の相性が悪いと書いていたことを思い出す。 実際、優月とひまりは仲良しなのに。 「私たちは例外なのかな」と言って、二人は顔を見合わせて笑った。
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