パーフェクトな運命

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その後もケイとはメッセージの交換が続いた。 ケイは歴史の勉強やアニソンが好きらしい。 優月も占いが好きなことを伝えた。 そしてついに、二人で映画を観に行くことに。 さそり座の2月のラッキーアイテムは『映画』だったからだ。 「今度の日曜かぁ…どんな映画を観るの?」 ひまりの質問に優月は心配そうに答えた。 「まだ決めてない…その場で選ぼうかなって…怖い映画じゃなければ何でもいいんだ」 「大丈夫! 相性いいんだからうまくいくって!」と、ひまりは励ました。 迎えたデート当日。 緊張して待ち合わせ場所に行くと―。 ケイはすでに来ていて、先に映画のチケットまで買ってくれていた。 ただ、渡されたものを見て驚愕する。 ホラー映画のチケットだったのだ。 断ろうとはしたものの―。 一生懸命選んだかもしれず悪い気がして思い直した。 「ポップコーン買ってくるよ」 「あ…うん」 ケイはポケットから財布を取り出し、何かがポロリと落ちた。 優月が拾い上げると、それは学生証で―。 ケイは奪い取るようにしてポケットに押し込んだ。 あれ? 何か違和感を感じる。 でも今はそれどころじゃない。 まずはどうにかこの状況を乗り切らないと…。 そうこうしているうちに映画が始まった。 スクリーンには恐ろしい映像が次々映し出されて…。 楽しそうなケイとは対照的に、優月は顔面蒼白。 映画が終わる頃には、ランチをするなど考えられないほど具合が悪かった。 二人は近くの公園のベンチに座って休むことに―。 優月は申し訳なさでいっぱいだった。 「ごめんなさい、私ホラー苦手って言い出せなくて、デート台無しにしちゃったよね」 「いや…僕こそ…気づかなくて、ごめん」 ケイはおどおどしながら何度も謝る。 気まずい空気に、優月は場を和ませようと話題を探した。 「ねえ、あの日に買ったニーチェの本、読んだ? 私、哲学の本なんて初めてだったけど夢中で一気に読んだの」 「…ああ、ニーチェね。うん、おもしろいよね」 なぜかケイは曖昧な返事。 「友だちとか自分のことを改めて見つめ直せたかなぁって。ケイくんはどの部分が印象に残った?」 「あー、うん…」 しまいには、はぐらかすように別の話になった。 「僕たち付き合ったんだから…スマホにある他の男の連絡先は消してくれないかな?」 「え? パパくらいしかいないよ…?」と優月は驚いた。 ケイはスマホを確認したいと言い出し、仕方なく手渡す。 カノジョのスマホをチェックするのって普通? 友だちも少なく、見られるのはなんとなく恥ずかしい。 画面をスクロールするうち、ケイは気になる名前をひとつ見つけた。 「…山崎俊太って?」 「あ…それは」 俊太とは、ひまりと一緒にいた時に連絡先を交換したんだった。 削除したくはないけど、変な誤解もされたくない。 「友だちの友だちで…別に消してもいいよ…」 デートは終始ぎこちなく、心から楽しめたとはいえなかった。
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