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「…というわけなの」
放課後、廊下の窓辺に寄りかかり、優月はうなだれていた。
隣にはひまり。
「ケイくんとはなんだかうまくいきそうにない…」
「ふーん…あんなに運命だって舞い上がってたのに?…次はどうするの?」
ひまりが疑問を投げかけると、優月は悩んだ。
「うーん…お互い期末テストがあるし、しばらく会わないことにした。その間に考えるつもり」
「考えるって…?」
そこに俊太が現れた。
「ひまり! 今日はテスト前で部活ないだろ? 久しぶりに家まで自転車で競争するか?」
「はあ?! そんなこと言って後悔しても知らないよ。最近ちゃんと筋トレしてるんだから」
ひまりは挑発に乗りながらも声が弾んでいる。
「本気で勝負するからね!」
「河本さん…こんちは」
俊太は優月にも笑いかけた。
ついでにという感じだったが、その笑顔だけで優月はドキドキした。
「な~んかシュンはユツキに優しいよね? 態度違いすぎ~!」
ひまりが俊太に突っ込み、「そ、そんなことないよ!」と顔を赤らめる。
優月は二人を微笑ましく思って見ていた。
***
帰り道、優月は駅に向かって歩いていた。
ひまりと俊太は今頃、仲良く自転車で競争しているだろう。
恋愛ってそういうキラキラした感じかなと思ったのに。
ケイとの関係は、ひまりと俊太みたいなものとは全然違う。
改札口まで来た時、優月の足が止まった。
向こう側からケイが出てきたのだ。
見渡して優月を見つけると、嬉しそうに駆け寄って来た。
「ユツキちゃん! ここで会えると思った」
優月は言葉を詰まらせた。
「あれ? ケイくん…どうして? 今日は会う約束してなかったよね?」
ケイの家はここから徒歩。
だからこの駅で降りること自体はおかしくはない。
ただケイの通う高校は遠いから、帰り時間には少し早いと思った。
「早退したんだ」
「え…?」
「ユツキちゃんに会いたくて、早退した」
それは冗談に聞こえなかった。
学校を抜け出して会いに来たってこと?
「ダ、ダメだよ。私、これから塾があるし…もう電車に乗らなきゃ。じゃあね」
優月は手を振って急いで改札に入った。
ケイは改札の外で手を振っている。
何か…おかしくない?
追って来なくてホッとしたが、恐怖を感じたのだった。
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