パーフェクトな運命

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奇妙な行動は次の日も。 優月が通う塾の前でまたケイに遭遇したのだ。 「少しでも会いたくて」 と聞いて優月はゾッとした。 「…私、塾があるって…サボるわけにはいかないよ? わかるよね?」 「わかってるよ。ここに来るの、迷惑だった?」 ケイの執拗さがどこか怖く、接し方がわからなくなった。 こんな気持ちで付き合い続けるのは無理だ。 「私たち、別れた方がいいと思う」 突然の別れの言葉に「え? なんで?」 と、ポカンとなるケイ。 「お互い成績に影響出たら良くないし」 「そんな理由、納得できない!」 ケイは声を荒げた。 優月はもやもやしていた気持ちを正直に話すことにした。 「映画に行った時、学生証を落としたでしょ。誕生日がチラッと見えた。5月30日だった。私には6月30日って言ってたよね?」 「そ、それが何? ちょっと間違っただけだ。誕生日が違うから別れるっていうの?」 自分の誕生日を間違う? 嘘をつく必要でもあったのかな。 5月30日だとふたご座。 ひまりと同じふたご座でさそり座との相性は良くない。 優月はハッとした。 「私が占い好きだから…? 星座に合わせて誕生日を偽ったってこと、ないよね?」 ケイの誕生日を尋ねたのは出会ってすぐだ。 占いが好きだと話したのはそれより後だから可能性は低いけど。 あともうひとつ引っかかっていることがあった。 「それに、ニーチェの本…」 「ニーチェの話はもういいでしょ?」 ケイはうんざり顔で話を遮った。 「ほら…あまりにも興味なさそう。読んでから気に入らないってこともあるかもしれないけど。あの時、どうしてあの本に手を伸ばしたの?」 ケイは下を向いて黙り込んだ。 優月はあの書店での行動を思い返す。 冷静になると、新書でもないのにタイミングよく同じ本を取るだろうか。 私が手を伸ばしたのを見て、わざと同じ本に触れたとか…? もしかして、最初から…? 後ずさりする優月。 「とにかく、私たちもう終わりにしよう、ね」 ケイが言い返す間もなく塾のビルに向かって駆け出した。 呼び止められた気がしたが、振り返らなかった。 こうして、優月の短い恋は静かに幕を下ろしたのだった。 *** 次の日、優月はひまりに別れたことを報告した。 ひまりは特に驚かず、あっさりしていた。 「そっか。しょうがないよ。今でよかったじゃん。これでテストに集中できるもんね。もう連絡もないんでしょ?」 優月は虚しく微笑む。 ケイとは、運命ではなく幻想だった。 恋への憧れから勝手に作り上げた夢だったのだ。 「それよりさぁ、テストが終わったらバレンタインだね? チョコどうする? 誰かにあげるの?」 そうか、そんな時期なんだ。 優月は「ひまりにだけ」と答えた。 「そっか。あたしもユツキとシュンに友チョコね」 「山崎くんにも?」 「しょうがないよ。毎年恒例だから」 バレンタインデーか…。 ひまりにどんなチョコを贈ろうかな、と考えると―。 テストが終わるのが楽しみになった。
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