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期末テストの日は淡々と過ぎて最終日、最後の科目の試験も終わり―。
優月は大きく伸びをした。
「ユツキ~、テストどうだった? あたしは全滅~」とひまりが嘆く。
「私も~。もう忘れよ。今日からひまりちゃんはテニス部の練習だね、頑張って」
何気ないやり取りの後、ひまりが窓の外を見て指を差した。
「あんなとこに他の学校の人がいるよ」
正門前に立つグレーの制服に眼鏡の細身な人影。
見覚えがある―。
「ケイくん…」
優月は反射的に身を隠した。
別れを受け入れられず、会いに来たのかもしれない。
「へぇ…あれがケイくん?」と、ひまりが目を凝らす。
「あたしが代わりに文句言ってやろうか?」と立ち上がるのを優月が止めた。
「いいの、ひまりちゃんは部活に行って。迷惑かけたくないし。私は裏門から帰るね…あのまま立ってたら先生に注意されて諦めるよ」
優月はそう告げて、教室を飛び出した。
裏門はその学校の人しか利用しないような小さな門だ。
そこなら外部の人が来ることはない。
足早に階段を駆け下りて校舎裏に回り、裏門へ。
野球部員たちが走る横をすり抜け、学校を後にしようとしたその時―。
「どうして逃げるの?」
突然、誰かが行く手を阻んだ。
そこにいたのは、髪が乱れ、青ざめた顔のケイ。
なぜ…?
優月は足がすくんで動けなくなった。
ケイがゆっくりと近づいてくる。
優月はぎゅっと目を閉じる。
怖くて涙がぽろぽろと頬を伝い落ちた。
「おい!」
鋭い声と大きな音がして―。
目を開けた時には、ケイは倒れ込んで尻餅をついていた。
殴られたのだろう、左頬を押さえている。
「…何するんだ」と面食らうケイ。
怒りを露わにした俊太がそこにいた。
「ケイ? おまえ、ここで何してるんだよ」と驚いている。
サッカー部の練習中なのか水色と白のストライプのユニフォーム姿。
「河本さん大丈夫?」と、泣いている優月を気遣った。
ケイは這いつくばっている。
近くにあった眼鏡を拾ってかけ直すと、のろのろ立ち上がった。
「シュン…ち、違うんだ。僕はただ…怖がらせる気はなくて。ただ、ユツキちゃんに謝ろうと…」
俊太は砂まみれのカバンを払ってケイに渡した。
二人は知り合い…?
ケイくんはどうして裏門に…?
浮かんできた疑問は言葉にならなかった。
へなへなと崩れるように座り込み、いつまでも泣きじゃくっていた。
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