パーフェクトな運命

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「おはよ! 今日はバレンタインデーだね」 教室に入ってきたひまりを優月は待ち構えていた。 「ひまりちゃん、ちょっといいかな?」 優月は毅然とした態度でにらみを利かせて外に誘い出した。 ひまりは無邪気に「なになに?」と優月について行く。 中庭に出ると、冗談めかして優月の顔を覗き込んだ。 「ねえ、まさかチョコのサプライズ? そういえば、昨日はちゃんと帰れた?」 どうやら昨日の帰りに起きたことを何も知らないようだ。 「昨日、ケイくんが裏門の方まで来たんだよ」 「えぇ? そうだったの? あたし、すぐ部活に行ったからさ」 優月はそれを聞き流した後に言った。 「ケイくんとひまり、同じ中学だったんだってね」 ひまりの顔から笑みが消える。 「どこからその情報…?」 「山崎俊太くん」 「シュンが?…なんで?」 まずいことがバレたと、ようやく気付いたようだ。 「ケイくんに会った時、私怖くて動けなくて。そしたらシュンくんが助けに来てくれた…その後、シュンくんの提案で、三人で話をすることになったの」 「三人で話を…?」 あれから―。 学校近くのカフェに入った優月たち。 向かいには落ち着かないケイ、その隣に俊太が並ぶ。 「ケイ、ごめん。河本さんが泣かされてると思って、つい殴った。ケイだと気づいたのはその後なんだ」 「いいんだ、シュン…僕が悪いから」 ケイはペコペコ頭を下げ、事の詳細を語った。 「駅前の本屋に行けって。それで偶然を装ってユツキちゃんに会えば、運命の出会いだと思われるって。占いが好きだから、かに座の誕生日を言えば喜ぶとも言われた」 ケイの言うことは支離滅裂で、俊太にはよく理解できなかったが。 優月にはだんだん輪郭がつかめてきた。 「映画はホラーにしろって…ユツキちゃんのスマホから男友だちの連絡先を消せって、全部指示通りやったんだ」 優月の代わりに俊太が「指示って誰から?」と尋ねた。 「ひまりちゃん」 その名前を聞いた瞬間、全貌が見えたのだった。
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