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「私のこと、からかったの? 私が運命に弱いから? 私…ずっと友だちだと思ってたのに」
優月は静かに問いかけた。
「ケイのやつ、だから昨日電話に出なかったんだ…」
ひまりはしくじったことに腹を立てていた。
真っ赤な顔でつぶやいた後、早口で反論する。
「ユツキが悪いんだ。告白してくれた人たちを皆断って、『運命の出会いじゃない』とか。ちょっとモテてるからって調子に乗りすぎ。懲らしめてやろうって思って何が悪いの?」
絶句する優月。
ずっとひまりはそんなふうに考えていたのだ。
「ケイとは中学が同じで、イジメから助けてあげたことがあって、あたしの言うことは何でも聞くの。顔も整ってて、ユツキの『運命の出会い』ってやつにピッタリだった。頼んだら喜んで協力してくれた…」
ひまりはヒステリックに笑う。
「先生に哲学の本のこと質問してるユツキを見て、絶対その日に本屋に寄ると思ったから急いでケイに連絡した。で、計画通り。ホントに運命だって信じるんだから笑っちゃったよ」
その時、俊太が優月を見つけて中庭にやってきた。
いつもならひまりに爽やかな笑顔を向けるのに、そうはしなかった。
優月の隣に来て、しかも肩に腕を回したので、ひまりは驚く。
「俺たち、付き合うことになったんだ」
ひまりの目が大きく見開かれ、二人を交互に見た。
「はぁ? シュンとユツキが? なんで?」
状況を理解しようと必死だ。
「昨日話してるうちに、お互いの気持ちがわかったんだ。ケイも応援してくれたよ」
その後、ひまりに厳しい口調でぶつけた。
「おまえのしたことはサイテーだ。ユツキちゃんと、それにケイにもひどいことをしたんだ」
ひまりは唇を噛みしめた。
「違う…勝手に暴走したのはケイだよ。昨日裏門に回ったってケイに連絡したけど、あれは謝りたいって言うからで…」
そんな言い訳はもうどうでもよかった。
今、優月は俊太と一緒にいて幸せだったから。
***
バレンタイン―。
優月はシュンにチョコを渡し、ひまりは誰にも渡さなかった。
それ以来、優月とひまりが一緒に過ごすことはなかった。
それでも、もうすぐ春休み。
2年生になればクラス替えだ。
3学期の終わり、まだ話す機会は残っていた。
ある時、ひまりが皮肉めいて言ったことがある。
「運命を信じるとかもうやめたの? シュンはてんびん座。さそり座とてんびん座は相性良くないもんね?」
運命は自分で切り開くもの。
今の優月にはよくわかっていた。
それでも―。
「でもね、不思議。巡り巡って運命かなって思っちゃうんだ。だって、もしあの時ニーチェの本を買ってなかったら、ケイくんと会わなかったし、シュンくんに助けてもらうこともなかった。シュンくんと付き合ったのも、ニーチェの本に出会えたのも、占いがきっかけなんだよね」
「何それ…」とひまりは困惑する。
「ひまりもニーチェ読んだ方がいいよ? その中にね、こう書いてあるの。『嫉妬とうぬぼれは友人をなくす』って」
ムッとして「ああ、そう。大きなお世話」と、そっけないひまり。
優月は軽やかに笑った。
「占いは当たってたよね。だって、私たちの相性、最悪だったもん」
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