モンスター・parents 9.29

1/3
前へ
/3ページ
次へ
ぼくはお母さんが嫌いだ。 だって、うそつきだから。 「タカシ、クラスで一番背が高くなったのね? 30メートルかあ…… あーあ、もうすぐお母さんより大きくなるんだろうなあ。こいつめっ!」  恥ずかしいのにぼくをむりやり抱きしめる、鋼鉄より強くてゴムより柔軟な胸。 「あら、また『ほのおのはきかた』で怒られたの?きっと教え方が悪いのよ!先生に文句言わなきゃ! タカシのプラズマ熱線は凄いんだから!まだ遠くに飛ばせないだけなの。自信を持ちなさい!お母さんは噓をつかないわ」 恥ずかしいからやめてよ、と言うぼくの頭のつのを撫でてくる銀色の手は優しいけど。 でも……ぼくは知ってる。 お母さんはうそをついてるって。 「ほらタカシ!イエローストーンの地底で取れた溶岩が安売りしてたのよ!たくさん食べてね!」 張り切ってキッチンに立つお母さんの後ろ姿。 すらりとした長い手脚。 赤いラインの入った銀色の体。 小さなお尻にはしっぽがない。 卵形のお顔の大きな目は、いつも光っていて黒目がない。お口も小さくてさ。 いくらぼくが成績が悪くたって分かるよ。 もう小学生だもん。 ぼくの手脚は太くて岩みたいにゴツゴツ。 指先には鋭いつめ。 背中に並んだ背びれは長いしっぽに続いてる。 目は黒目勝ちだし、口だってこんなに大きくてズラリと牙が生えてるんだ。 お母さんは超人フルパワマン。 ぼくは怪獣。 ……ぼくは、お母さんの子供じゃない。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加