なくなりつつある竹やぶと竹あつめでであった今

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なくなりつつある竹やぶと竹あつめでであった今

 竹やぶっていつから消えたのだろう。  茅沼(かやぬま)が気がついた時には筋トレ器具と田んぼが少しだけあるだけで図鑑(ずかん)にのってるような生き物なんてほとんどいない動画でいつも見る生き物ばかりで新鮮味(しんせんみ)なんてなかった。  むかしは竹やぶでタケノコを集めていたころがあった話を聞いていたがほんとうなのだろうか?  2024年で高校一年生になって恋愛小説か恋愛リアリティー番組のあいだにいる顔の女子高校生とつきあって彼女がもっている竹筒(たけづつ)に興味がひかれた。  そして健康と趣味である筋トレを家でやりながらむかし竹やぶでタケノコ以外も集めていたかもしれない記憶を思い出すために通学で知った残っている竹やぶを目的地として茅沼(かやぬま)は彼女との約束をいちど保留(ほりゅう)にし竹やぶへやってきた。 ▽  竹やぶは奇跡的に残っていた。  それでもいつ開発されてもおかしくないように看板に予告が立てられている。  どうやら猿被害(さるひがい)で竹やぶをなくそうとしているらしい。  自然を大切にしようと働きかける世界の中でずいぶんと夢のない話に茅沼(かやぬま)は思えた。  枯れた竹でも集めようと気持ちを切りかえて許可された範囲(はんい)の竹やぶの中を歩き、枯れた竹をひろっていると女子中学生らしき制服を着た女の子と弟らしき男の子がやってきていて竹やぶの中をさまよっていた。  迷子かと思い、茅沼(かやぬま)は声をかける。  すると二人はこの竹やぶで竹をどうしてもスマホも使わずに目へ焼き付けたいと茅沼(かやぬま)に強い意志をぶつけてきた。 「もう自然がみられなくなる。 元々工業地帯(こうぎょうちたい)のいなかで治安も良くないのに自然までうばうなんてだから立場が上の年寄りは嫌いなんだ。 それにスマホも。 だから二人で竹やぶの思い出を残したくて」  二人の目線までしゃがんだ茅沼(かやぬま)は予備で買っていたインスタントカメラを女子中学生に手渡した。 「そのカメラから現像(げんぞう)の仕方さえ分かればスマホなんて使わなくても竹やぶを残せる。 教えるよ。 現像(げんぞう)のしかた」  女子中学生の弟が目を輝かせてインスタントカメラを受け取っていた。  そうだよな。  せっかくの今は残っている自然をたくさん集めたいよなあ。  三人はそんな難しくないカメラの操作にすこしとまどって竹やぶを(うつ)した。  記憶にはずっと残るさ。  茅沼(かやぬま)は自分は(おさな)いと思っていたのに二人の前では男子高校生として頼りになるお兄さんへなったのだった。
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