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拷問に弱い
敵国の城に捕らわれたセバスチャンは、独房の中で妄念をたくましくしていた。
(いったいどんな仕打ちが待っているのじゃろう)
考えただけで震える。セバスチャンは鉄製のベッドに腰かけ、両手で顔を覆った。
(拷問じゃ。拷問が待っているのにちがいないのじゃ。どのような拷問か。むち打ちか)
セバスチャンの背中を悪寒が走る。
(そ、それとも。水責めか。大量の水を強引に飲まされるのか)
吐き気がしてきた。思考がセバスチャンを苛む。
(三角木馬。あれは、股間が裂ける。大出血じゃ。そ、それとも、焼けた針金を爪のあいだに刺されるとか)
セバスチャンは恐怖のとりこ。わなわなからだが震える。
(う。うう。この老体にとっては、どんな拷問も耐えがたい。我が城の秘密の出入り口を簡単に話してしまうことは、火を見るより明らか)
セバスチャンはベッドから立ち上がった。せわしなく牢屋内をうろうろ歩き回る。
(恐ろしい。恐ろしい。ああ、縫い針を何本もこの身に突き立てられるのか。南京虫の樽に突っ込まれるということもあり得る。それこそまさにかゆみ地獄。もしくは、髪の毛を百本ずつむしり取られるとか。関節を逆方向にぎゅうぎゅうねじり上げられるとか。う、うおお。うおおお)
セバスチャンは立ち止まった。恐怖で目は血走り、口からはくさい吐息がもれる。手足の先が冷たく、知らぬうちに小便を漏らしている。
セバスチャンは声を大にして叫んだ。
「い、嫌じゃ。嫌じゃあ。痛いの、苦しいのは絶対にごめんじゃ。怖いよ。怖いよお。拷問は嫌じゃあ。ぜ、絶対に拷問だけはごめんじゃあ」
と、そのとき、《どーん》という大きな炸裂音がした。そのあと地響き。
セバスチャンは思わず叫ぶ。
「ひいいいい!」
音の正体は援軍の砲撃だった。大規模でやって来た援軍は、わずか三時間で敵国の城を落とした。
セバスチャンも救出される。
両肩を二人の兵士に支えられ、引きずられるように助け出されるセバスチャン。
兵士が訊ねた。
「どうでした?何か身に危害は」
セバスチャンは応えた。
「う。すごい拷問じゃった。
ーー特になにもされてはおらぬが」
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