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日本とあまり変わらない蒸し暑い日が続く7月7日
ニューヨーク――…
「あ、斗真さん見て!本当に七夕の飾りがある!」
花園香澄は少し興奮気味に神楽坂斗真の手を引っ張った。
NYの某ホテルにある中庭。
この辺りでは珍しく七夕の飾り付けをしていると聞いて、二人でやって来た。規模はそれほど大きくはないが、それでも日本の七夕の情緒たっぷりだ。短冊が風にそよそよ揺れて、涼しげな音を奏でている。
さすがNYのホテルだけあって、短冊の願い事も国際色豊かだ。何ヶ国語もの言語でそれぞれの願いが書き綴ってある。
「昔、二人で短冊に願い事を書いたのを思い出しますね」
香澄はふふっと笑いながら、カラフルな短冊の一つに指で触れた。
今でもあの商店街を二人で延々と歩いた楽しい思い出は、斗真の記憶に鮮明に残っている。
あの日から何年もの年月が流れた。ずっと離れ離れだった時もあった。二人一緒の未来を諦めた時もあった。でも今二人は一緒だ。
斗真は優しく微笑むと、ギュッと彼女の肩を抱き寄せた。
「短冊にまた願い事を書いてみるか?」
「はい!」
斗真は側にあった箱から黄色い短冊とペンを取り出すと香澄に手渡した。
あの時の彼女の願いは『自由に生きたい』だった。でも今の彼女にはその自由がある。
今願うものはなんだろうと、隣で願い事を書いている香澄を覗き込んだ。
「なんて書いたんだ?見せてみろ」
香澄は恥ずかしそうにしながらも、斗真にその願い事を見せた。
そこには綺麗な字で『斗真さんといつまでも一緒にいられますように』と書いてある。
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