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「……この願い、実はあの夜もこうして短冊に書いたんです。でも吊るすことが出来なくて」
香澄は少し悲しげに微笑んだ。
「あの夜、もしこの願いを星に願ってたら、違う未来があったんじゃないかって……何度も後悔しました。でもあの時は斗真さんはただの上司だったし、この願いを堂々と吊るす事なんか出来なくて……」
香澄は手にした短冊をぎゅっと握りしめた。今でも二人が失ってしまった年月を後悔しているのがよくわかる。
斗真は思わずぎゅっと強く香澄を抱き寄せた。
「今の君には自由がある。ずっと夢だったニューヨークで仕事をしてる。そして……俺たちはこうして今一緒にここにいる」
確かに遠回りした。沢山傷ついた。多くのものを失った。でもあの過去があるからこそ、今の幸せがどれだけ奇跡なのかよくわかる。
「斗真さんはなんて書いたんですか?」
「俺の願いか?」
斗真は手の中にある短冊を香澄に見せた。
そこにはあの夜と同じ『彼女の願いが叶いますように』と角ばった字で書いてある。
「あの夜も、これと同じ願い事を書いた」
あの時も、今もそしてこれから先も斗真の願いはただ一つだ。香澄の願うものを全てを叶えてやりたい。
斗真は香澄の頬を両手で包み込むと、コツンと額をくっつけた。
「香澄。こうして側にいて、君の笑顔を見ていたい。夢を一つ一つ叶えて喜んでいる君をずっと見ていたい。どうか…………俺と結婚してくれないか?」
斗真は震える声で尋ねた。こんなに緊張しているのは人生初めてかもしれない。でも今この手の中にある奇跡を二度と失いたくない。
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