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その夜――…
「香澄、今日は楽しかったか?」
部屋の電気を消してベッドに入った斗真は、ギュッと後ろから香澄を抱きしめた。
ここはアグノスから提供されている会社近くの小さな部屋で、建物自体は古いが中はリモデルされていてとても綺麗だ。
香澄も同じように提供されている部屋があるが、斗真の部屋の方が大きいのでいつも2人でここで過ごしている。
香澄は寝返りをうつと、幸せそうに笑って斗真に擦り寄ってきた。
「はい!久しぶりに女の子だけで遊んで楽しかったです」
「そうか。よかったな。……その……如月さんとは大丈夫だったか?」
「うん、とっても仲良くしてくれました。凛桜さんはすごく大人だから……。そんな意地悪したりする人じゃないし、とても気を使ってくれて……。蒼さんもすごく素敵な女性だし、3人で楽しく過ごしました」
香澄はそう言った後、少し心配そうに眉根を寄せた。
「斗真さんは、その……藤堂さんとは大丈夫でしたか?」
「……そうだな」
斗真は一樹と颯人と3人で、香澄たちを探してマンハッタンを歩き回った1日を思い返した。
確かにいろいろ言い合ったりもしたけど、愛する女性を探すという共通の目的を持った3人と一緒に協力しながら過ごした1日はそんなに悪くはなかった。
「まぁまぁだったかな。悪くはなかったよ」
斗真はふっと小さく笑った。
「よかった。………あっ!そういえば、すっかり忘れてた!」
香澄は突然ガバッとベッドから起き上がると、ウォークインクローゼットの中から小さな紙袋を抱えてベッドまで戻ってきた。
「斗真さん、これお土産です!」
香澄は持っていた紙袋を斗真に差し出した。とある有名メンズブランドのロゴの入った小さな紙袋だ。
「俺に?」
ベッドから起き上がって早速袋の中を覗くと、小さな箱が二つ入っている。
蓋を開けると一つにはネイビー色の落ち着いたデザインのネクタイが、もう一つには小さなサファイアがついたネクタイピンが入っている。
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