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探偵から京都旅行の報告があった。
「河合愛梨は子供が産めない体のようです。今回は新幹線で後ろの座席を確保できたので会話を録音できました」
それは前回知らなかった、私にとっては新しい情報だった。
「子どもが産めない?なぜ産めないのですか?」
「そこまでは分からないです。婦人科系の病歴があるとかでしょうか。要因はさまざまです」
「それを調べることはできますか?」
「できなくはないですが……病歴となると、彼女のかかりつけの病院の職員から情報を得るとかしないと無理でしょう」
「お金はいくらかかっても構いません。調べていただけますか?」
「違法な事になるかもしれませんので、証拠として認められない可能性があります」
「それでも構いません。お願いします」
私は必死だった。
彼女が妊娠できないのなら離婚はしないだろう。
一度目の人生で、私は精神的におかしくなった。
子どもを育てられる状態ではなかったから、離婚し、親権も奪われた。
彼が私と離婚して彼女と再婚したとしても、子どもが産めない彼女では自分の子は望めない。
私がおかしくならなければ離婚はなかっただろう。
今回の人生で、私は精神的に安定している状態を保っている。
雄太を、そして生まれてくる美玖を奪われることはない。
探偵に京都まで尾行してもらったため、かなりの調査費用がかかった。
探偵の費用は私の預金では補えない額になった。
離婚して子供を取られてしまったら、いくら自分のお金を持っていても意味がない。
自分のお金は無くなったが、夫の預金がある。
夫は平気で不倫旅行やホテル代、彼女へのプレゼントにお金を使っている。
彼は年収が高いから、探偵の代金を家族の口座から出した。
これくらいの金額は使用しても問題ないだろうと思った。
夫は自分の預金残高や、生活費の使用額を確認することはなかった。
結婚当初から、金で苦労はさせないと言って、私に通帳を預けてくれている。
彼がカードで河合愛梨にブランド物のネックレスを購入したら、それよりも良い品のネックレスを自分に買った。
彼が彼女と高級なレストランへ行ったら、自分も特上の寿司を出前で頼んだ。
それはストレス発散になったし、私が穏やかに過ごすのに必要なことだった。
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