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26歳で結婚式を挙げ、すぐに子どもを身ごもった。
結婚しても仕事を続けるつもりだった。
けれど、悪阻が酷く立ち上がることすら困難な状態になったので、仕方なく仕事を辞めた。
「俺の稼ぎで十分やっていけるから、専業主婦になってほしい」
優しい夫の言葉に涙が出た。
彼は一流商社の営業だ。同じ年代の平凡なサラリーマンの倍は収入があった。
「ありがとう。迷惑をかけてごめんなさい」
兄妹も親も親戚もいない。
私には夫しかいなかった。
新居で悪阻に苦しみ、動けない私に文句も言わず彼は優しくしてくれた。
何もできない自分が悔しくて、申し訳なさに毎日涙が出た。
ごめんなさいが口癖になった。
「今だけだろう。数カ月で悪阻も治まるんだから頑張って」
嫌な顔ひとつせず、献身的に尽くしてくれる彼を心から愛していた。
私は重症妊娠悪阻で1ヶ月入院する事になった。
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