一度目の人生

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最初の子ども雄太(ゆうた)が産まれ生後半年になる頃、スーツのポケットからラブホテルのレシートが出てきた。 私は彼を問い詰めた。 「これは俺の物じゃない。誰かのレシートを一緒に持って帰ってしまったんだ」 知らない香水の匂いや、深夜のタクシー帰りも全て仕事関係だと言い張った。 私は雄太を一時預かありの保育所に預けて、彼を尾行し浮気の証拠を撮影した。 それでも彼は浮気を認めなかった。 「浮気をやめてさえくれれば、私は許すから……」 「だから、浮気なんてしてない」 彼は浮気を認めなかった。 それが私のストレスになり、彼の全てが信じられなくなっていった。 食事が喉を通らなくなり、少し食べては吐いてしまうようになった。 体重が減って、女性らしい体つきではなくなっていく。 夜も眠れず、洋服や化粧にも気を配れなくなった。 肌はボロボロになり、日中ずっと泣いていた。 相談できる相手もいない。 夫に何度も浮気をやめてと頼んだ。 煩く言う私をうっとおしく感じた雄一さんは、休日も外出するようになった。
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