夫の人生

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夫の人生

《雄一side》 「久しぶりに、雄太を遊びに連れて行ってやろうと思ってるんだ。今度の日曜は雄太、お出かけしような」 ここ最近は美鈴との夫婦関係は円満だ。 家にも早く帰っているし、雄太とも一緒に遊んでやっている。 美鈴は満足だろう。 「どこに連れて行きますか?パパとお出かけできるなんて雄太は喜ぶと思います」 「動物園へ行こうと思っているから、準備を頼むよ」 愛梨はずっと雄太に会いたいと言っていた。 彼女と会える時間が減ってしまい、休日はずっと家族サービスばかりだったから少し拗ねているようだった。 そろそろ愛梨も構ってやらないと可哀そうだ。 「ああ。君は留守番してくれてかまわない」 「そうですか」 「いつも、雄太の世話を一人でしてくれているからな。たまにはゆっくりすればいい」 「ゆっくりさせてもらうわ。ありがとう」 ものわかりの良い妻は扱いやすくて楽だ。 雄太もそろそろ愛梨に慣れていってもらわなくてはならない。いろんな大人に遊んでもらえて雄太も喜ぶだろう。 「暑くなりそうだから、帽子を持っていかなくちゃね」 美鈴はそういうと食べ終わった食器をキッチンに運んだ。 妻の作る夕飯は俺好みの味付けで、毎日食べても飽きがこない。 外食ばかりで偏り気味だった食生活も改善され、最近なんだか体の調子が良くなった。 この生活を手放すと考えると少し惜しい気がする。 「美鈴は家の事もよくやってくれているし、感謝してるよ。俺は幸せだよ」 美鈴は、ふふっ、と笑った。 しっかり妻を褒めておくことも忘れない。 美鈴は勉強もできるし、真面目でしっかりした性格だ。容姿も整っている。 俺の子を産んでくれる母体としては申し分ない。 一途で俺に頼り切る彼女を守ってやらなければと思い結婚を決めた。 けれど、子どもができてからは子ども中心に物事を考えるようになり、夫である俺を蔑ろにしだした。 生意気な態度は癪に障る。 一気に愛梨に気持ちが傾いていき、妻を女として見られなくなった。 一生一緒に暮らすことを考えると、美鈴では物足りない。 なかなか上手くいかないもので、可愛く俺に甘えてくる愛梨は子供を産む事ができなかった。 仕方がないから、雄太ともう一人くらい子どもができれば妻と離婚して愛梨と子供達で新しい家庭をつくろうと思っている。
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