夫の人生

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「もういいじゃない!慰謝料まで払ったのよ。なのになんで奥さんと離婚してくれないのよ!」 愛梨が泣きながら俺を責める。 もう不倫の事実を認めているから、愛梨と会うのを隠す必要はないが、まだ離婚していないから堂々と会うのは嫌だった。 「離婚はするって言ってるだろう。雄太の親権が問題なんだよ。俺は雄太を手放したくはない」 「でも、いろんな弁護士に相談しても無理だって言われたんでしょう?養育費だっていらないって言うんだからもう諦めてよ」 「金の問題じゃない。雄太は俺の息子だ」 こんなに面倒くさい女だとは思わなかった。 料理も下手だし、家事も得意じゃないみたいだ。洗濯を頼んだらしわくちゃでアイロンをあてた事がないという。 「私を愛してるって言ったじゃない。奥さんと離婚して早く一緒になりたいって。そういう計画だったでしょう?」 「だから何度も言うけど、子どもはどうするんだよ」 「私が子供を産めないからって……酷い。それでもいいって言ったでしょう?子どもが産めない体だってことも全部ひっくるめて好きだって。私は3年待ったのよ。日陰の存在でずっと我慢して3年間も待ってたのに……」 俺は愛梨を抱きしめた。わかっている。責任を取らなくちゃいけないことくらいわかってる。 「もう少しだけ待ってくれないか。今調べてもらってる事があるから。妻の居場所が分かれば説得して雄太を取り戻すから」 「子ども子どもって……私より子どもが大事なの?」 当たり前だろう。俺の子だぞ。 美鈴を抱いてから、愛梨が安っぽい女にみえてきた。 やけに男慣れしているし、風俗嬢みたいな技を使う彼女。貞操観念はどうなっているんだと思えてきた。 妻がいたときは、スリルがあって面白かった。ハーフで連れて歩くと自慢できる美人だった。 でも、美鈴のように清楚な色気はない。 美鈴と同じ年齢なのに我儘な子供のように感じる。 「私、慰謝料でお金なくなったから、雄一さんの家に引っ越すしね。もう奥さんも住んでいないんだからかまわないでしょう」 「何言ってるんだ!まだ離婚もしてないのにマンションに女連れ込んでるなんてバレたらそれこそ」 「だから離婚すればいいじゃない、子どもは諦めて!アメリカで代理出産しましょうよ。私はハーフだから雄一さんと私の子どもだって言ってもバレないでしょう。可愛い子が産まれるわ。争わなくったってお金で手に入る子どもよ」 雄太じゃないだろう。よその女の子だろう。 そんなもんはいらない。 「……ああ、その辺はまた考えよう」 だいたい、美鈴にもう一人子供を産ませてから結婚する予定だっただろう。 なんで今すぐ愛梨と結婚しなきゃいけないんだ。 数年はまだ待てるだろう。 くそっ!何もかもうまくいかない。 弁護士からはひと月で決めろって言われてるのに、どの弁護士に頼んでも親権は難しいとしか言われない。 今、探偵に頼んで美鈴の居場所を探してもらっている。 必ず見つけ出して、絶対に話し合うつもりだ。
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