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ゲート
◆ゲート
僕だけではなく、近所の子たちも教団の施設が気になっていたのか、
「山を見に行かへんか?」と誰かが言うと、皆が賛同した。
僕は近所の子供たちと連れ立って、事の真相を確かめるべく山の麓に向かった。
まず驚いたのは、山に上がる道が綺麗に舗装されていたことだ。歩き易く、車でも上がれるようになっていた。
だが、舗装された道の前には、大きなゲートが出来ており、更にその脇には事務所みたいな建物があった。
中の人が僕たちを見つけたのか、警備員が出てきて、
「こっからは関係者以外は入ったらあかんで」と言った。
そんな制止を振り切って山を上がるほど、僕らは勇気を持ち合わせてはいない。
大人しく「仕方ないな、帰ろか」と誰かが言った。
その時、足を留める声が聞こえた。
それは文哉くんの声だった。
「あの建物は何やろ?」
彼は山の上の方を見ていた。そこには仏塔がある、
「あれは仏塔や。僕の家の二階から見える大きな塔や」
僕がそう言うと、文哉くんは、
「それと違う建物や。仏塔は知ってるけど、その近くにもう一つ立ってる建物のことや」と言って仏塔の近くを指した。
確かに仏塔の近くに四角い箱のような建物があった。仏塔よりも低いので見えなかったのだ。
文哉くんだけではなく、他の男の子も気になったのか、子供の一人が警備員に、
「おっちゃん。あの建物は何や」と訊ねた。
すると、警備員は薄ら笑いを浮かべ、
「子供らは知らんでええ」と言った。
そんなことを言われると余計に気になるのが子供というものだ。
帰り道、僕たちは「あの警備員の薄ら笑い、気持ち悪かったな」と言ったり、「イヤらしい顔をしてたで」と言ったりした。
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