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決起
◆決起
宗教の施設の存在、ひいては楼閣の存在を許せない者は、少なからずいた。それは大人の女性たちだ。
大人の女は、自分の夫が楼閣に出向くのを許せなかったし、子供の教育にも良くないと考えるからだ。当然の流れだ。
だが、それくらいのことで教団の施設は無くならないし、同じく楼閣もそうだった。
ある夕暮れ、楼閣に上がる男たちを遠目に見たことがある、
山に上がるつづら折れの道を白装束ではなく、黒い服を着た男たちが上がっているのだ。
ゲートを超えているということは、やはり教団と楼閣は繋がっているのだろう。
男たちが目をぎらつかせるようにして山を上がっていくのが目に見えるようだった。
白装束も不気味だったが、黒い男たちは更に異様で淫靡だった。
淫靡なのは大人の男だけではない。
大人の欲望が子供たちに感染するのか、男の子たちにもその欲望が芽生え始めた。
と言っても、子供が大人の女を買えるはずもない。
ただ純粋な好奇心が頭をもたげ、大人たちが関心あるものに興味を示すだけだった。
「楼閣に行ってみよか」文哉くんが声を上げた。
それは只の好奇心からくるものだった。自分の目で確かめたい。そんな気持ちだ。
「そやけど、ゲートには警備員がおるで」誰かがそう言うと、
「あんな道を通らなかったらええだけの話や」文哉くんはそう返した。
文哉くんの言う通りだった。山に上がる道は他にもある。
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