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季節は夏の夕暮れだったが、僕たちは虫を捕りに行くのではなく、山の楼閣の存在を確かめるべく山に向かった。
皆が皆、興味津々だった。
楼閣へは、舗装された道を封鎖するゲートではなく、けもの道を通った。すると警備員に見つかることなく容易に山に上がれた。
その途中、僕が好きな子と手を繋いで駆けたいと思っていた草原があったが、それを横目に進んだ。
「あれが楼閣や」
文哉くんの声に、僕たちはその巨大な建物を見上げた。
陽が沈みかけた暗い空を背景にそびえ立つ楼閣は異様だった。
数えると四階建てだ。それよりも違和感があるのは、仏塔が日本式の建物であるのに対して、楼閣は和と洋が入り混じったような様式なのだ。とても、この国の建物とは思えなかった。
ここで売春が行われている。
ここまで来た子供たちは皆そう思った。
想像力のたくましい子供だったせいか、建物の中から女の嬌声と男の声が聞こえてくるように感じた。
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