花嫁の好きな木

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「殺した人間を何処に埋めた、正直に話せ」 取り調べからすでに2時間が経過しているというのに進展は一ミリもない。 今から8時間前、ちょうど朝の7時に起きた事件は凶悪なものだった。 被害者は南方里奈27歳女性であり、本来なら今日の10時に挙式する予定のはずだった。 彼女は生前明るい性格で人当たりがよく、トラブルを抱えるような人間では無かったと親族が証言していた。けれど、一度だけ異性関係でトラブルを起こし警察に被害届を出していた事が死後に発覚したのだ。 そして目の前で呑気に口笛を吹いている男こそ、今回の花嫁殺害の犯人であり南方里奈がトラブルを抱えた人物だ。 「罪を犯したという自覚が無いようだな」 男は口笛を吹くのを止めたと思えば軽薄そうな笑みを浮かべ口を開けた。 「罪?あの子のためにプレゼントをあげただけなのに?」 「南方里奈に何を渡した」 男は眉間に皺を寄せ不快そうな表情をした。眉間の皺を解すように親指を押し当てた思えば、いきなり自分の頬を思いっきり叩き出した。 死に関わる行動では無いと判断しているため止めはしなかったが、急に身振りをしだした事に疑問を感じた。 「…南方里奈に関係する人物にプレゼントを渡したのか?」 「_ふふっふっ…あの子どんな顔してた?」 「ターゲットは新郎の方だったんだな」 男は俺の発言に嬉しそうに笑い声を漏らしていた。けれど突如無言になったかと思えば無表情で俺に顔を近づけてきて耳元に囁いてきた。 「ここの近所に小さな山があるだろ…あの山な凄く綺麗な花を咲かせる木があるんだ。そこに花嫁を置いた」 「…そうか、お前を豚箱にぶち込めるのが嬉しいよ」 「ふふっふっ…花嫁に会わせてあげてよあの子喜ぶはずだから」 恍惚とした表情を浮かべた男の顔面を殴りたい衝動を抑えて取調室を出ていく。後に残ったのは男の気味の悪い笑いだけだった。
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