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58 何とかなりました…?
「……どうしましょうか」
衝撃的過ぎて思わず素で話しかけてしまう。まあ大丈夫ですよ、身内しかいませんし。
「いや……私もこのようなことは初めてだ。過去にもその石が割れたと言う記録はないな」
「ですよね。直せる方はいらっしゃらないのですか?」
完全に儀式的な雰囲気がなくなってしまった。この部屋にいる誰もが絶句しているのが振り返って見なくても分かる。こういう壊れた物を直す能力とかないですかね?
「陛下、リーシャの力は証明されましたし、一旦短剣は預かって直す方法を探してみてはいかがでしょう?」
「そうだな」
皇后陛下のお言葉でトラブルはあったけど何とか継承式が終わり、祝宴へと移った。
この場にいるロードは全員瞳の色を本来のオッドアイの方に戻しているから中々見ない光景になってるね。お母様と旦那様のしか見たことがなかったからこんなに様々な色の組み合わせがあるとは思わなかった。ただ、わたしと同じ紫と金の人は誰もいない。珍しいのかな?
「それにしても普通、継承式で家宝を壊す人はいないぞ?」
「そうですよねえ……わたしもびっくりしました。心の中でご先祖様に謝罪してましたよ」
「君は力のコントロールが苦手なのか?」
「そんなことはないです。わたしは感情が乱れることがほとんどありませんし」
力のコントロールには感情が大きく影響してくる。もちろんわたしも感情が乱れることはありますよ?お母様が亡くなった時はずっと泣いてましたし、先日お姉様と喧嘩をした時も。でも絶対に一定を超えないようにしてますから。お母様の教育で一番厳しかったのは感情コントロールでしたし、激情に駆られることとかないんですよ。
だから力のコントロールはむしろ得意な方だと思います。あの宝石がどういう仕組みなのか分からないから正確な原因は分からないですよね。
「初めましてリーシャ様。ヴェルフェイン公爵家当主、スザンナと申します。本日はおめでとうございます」
「お初にお目にかかります、リーシャ・ロード・フェルリアです。長らく当主の座を開けてしまったことをお詫び申し上げます」
「いえいえ、当主でなくとも国を、皇家を支えて下さっていたことは存じ上げておりますから。今後良い関係を築けると嬉しいです。それでは失礼致します」
はい、このやり取りは何度目でしょうか。夫婦であってもお互いに当主となったので旦那様にも一番最初に挨拶されました。旦那様に丁寧に話されると少し寒気がする、と思ってしまったことは生涯秘密にしておきます。祝宴なんてしなくて良いんですよ。それより早く帰りたいです!
………とは言えませんけどね。
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