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60 残念ながら、リーシャ・ロード・ユリウスにもなりました……
「私としては公爵でも足りないほどの功績だと思っているがな。まあそれは建前だから気にすることはない。公爵位は絶対に受け取ってもらうぞ」
「一応お聞きしますが、わたしに拒否権はありますか?」
「ない」
やっぱりそうですよね。拒否権があるなら最初からこんな話しないはずですし。
「でしょうね。分かりました。式はいつになるのでしょうか?」
「必要か?」
「いえ、結構です」
「それなら式はなしで今この瞬間からリーシャは公爵夫人とは別に爵位を持つことになる。この場にいる者は全員把握済みだ」
随分と用意周到じゃないですか……わたしは旦那様と離婚したあとは平民になるのかと思っていましたし、それはそれで面白そうだとも思っていたんですけどね。
この場にいる全員把握済みと言うことは旦那様も知っていたのですか。そうですか。
「家名は?」
「ユリウスだな。領地のことはまた追々」
「承知致しました」
───さようなら、わたしの静かな老後。老後について考えていたわけではないけど、公爵になってしまったのだからゆっくりは出来そうにないね。
……まあいっか。どうせ暗殺の仕事を一度でもしたことがある以上常に自分の命も狙われ続けることになるしね。どちらにしてもゆっくり、なんて出来ない運命だったのでしょう。悲しいですけどね………
まあ非常に残念な話も終わり、その後はただの世間話でもして旦那様の元に戻った。わたしが爵位の話をしていたのだと分かっている旦那様は相も変わらず嫌味な笑顔を浮かべていた。どうせ「これからはもっと面白くなりそうだ」とか思っているんでしょうね。一度で良いからいつか本気でぶっ飛ばしたいですよ、この人。
あ、淑女らしかぬ言葉なのはお見逃しくださいね?
「それにしても平和ですね。継承式のことを知っているのはごく一部ですけどいくらでも調べようはありますし、何か起こってもおかしくないと思っていましたのに」
「リーシャ。それはフラグと言われるものじゃないか?」
「冗談はやめてくださいよ」
そんなこと言われたら本当に何か起こりそうな気がしてくるじゃないですか!せっかく安心していたのに!
わたし達ロードの身に何か起こるのは別に良いんですよ。みんなある程度は戦えるでしょうし。でも皇族の皆様になにか起こったら大変じゃないですか。皇族の皆様のために戦うことで能力を知られてしまうのは別に構いませんが、わたしだって万能じゃないですからね。わたしが守り切れないことがあったら怖いですよ。
だから旦那様、取り敢えずそのわざとらしいけど神妙な顔はやめてください……!
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