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その子、友だち何人かといったらしいんだけど、境内ではぐれちゃったようで、結局そのまま見つからなかった。
そのお祭りにね、見世物小屋があったっていう話が、いろんな生徒から出てきたのよ。でも、本当かどうかはわかんない。みんな当然都市伝説知ってたから、つくり話だったのかも……。
うちはいってなかったのよね。いきたかったんだけど、その年はたしか、風邪かなんかひいて、外出許可が出なかったんじゃなかったかな……。
逆に、そんな小屋は見なかったっていう子も結構いたんだけどね。
見た子の何人かは、“なになにの小屋”っていう看板がかかってたっていってたわ。“なになに”の部分は、知らない漢字だったのか、文字自体が汚れてるかなんかして判読不能だったのか……。当時、そんな追及はしなかったから、はっきりしたところは不明」
なになにの小屋……。
「あったのかなかったのか、どっちが本当だかわかんない。でもね、そっから一つの意見が生まれたのよ」
「なに~?」
「その小屋は、見える者にしか見えないんじゃないかって」
「見える者にしか見えない……」
思わずわたしの口はなぞっていた。
「ことがことだったから、みんな冗談半分ふざけ半分じゃなかったのはよく覚えてる」
明里の声はわたしに送られたようだった。
「ねえ―――もし、行方不明になった彼女が見える子だったとして~、見物料って払えたのかしら~? そう安いものでもないんじゃな~い? ほかの出店も楽しみたいでしょうし~」
「たしかに。―――考えられることは、もぐり込んだか……っていうぐらいね。だから、それも謎っていえば謎か……。
とりあえず、翌年の秋祭にもみんなでいってみたのよ。でも、見世物小屋なんか出てなかった」
「どういう人が見えるのかしら~?」
「それも当然謎。ただわかってんのは、今でも彼女が見つかったなんていう情報のないこと」
近くをすぎたグループの爆笑が、話の隙間に入り込んだ。
「まあ、彼女が小屋に入った現場を見た子なんていなかったわけだし、結局、いたずら目的の誘拐だったんだと思う。なにせあの子、美形だったから。
ドラマの知識だけどさ、いたずら目的の場合、犯人の大半は性犯罪者で、用済みになればまず殺されるんだって」
「やだ~、やめてよ~」
「生存率は誘拐後、一時間半以内で七割五分で、二時間以内だと半分ぐらいだったか……」
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