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言い知れぬ背徳的匂いに包まれた名称を冠する小屋の中は、いったいどんな世界が広がっているのか……。
興味はたちまち膨れあがった。
伝説自体は信じてなどいなかった。
はじめは書物で調べた。のち、動画を閲覧しまくったのは、元来持っていたグロテスクなものへの強い関心からだったのだろう。
都内ではいつどこで小屋が立つか、もちろん知っていた。だけど、足を運ぶタイミングが今までなかった。
しかし―――呼び込みもおらず、けばけばしい構えでもなく、中から悲鳴や演者の声もない。
情報で得ていた小屋の様相と、ここはまったく違う。
ではいったい、どんなものを見せるのだろうか……。
疑問が期待を一層大きくさせた。
『そっと開いて御入り下さい』
ダンボールの文字に従い、オレンジ色の幕をさばいた。
中身と小屋名に、なにかつながりがあるのか……。
と考えながら入った内部は、予想外に暖かく、また不思議と、外からの一切の音を遮断していた。
ほかの客の気配は感じられなかった。
いきなり目前に垂れていた黒幕を、恐る恐るまわり込んだ。
度肝を抜かれるとは、ああいうことをいうんじゃないか……。
―――蝋人形。すぐにわかった。
でも驚いたのは、つくりの精巧さではなく、二体の状態だった。
―――裸の女同士の合体。
しかも若い二体、快感に歪む表情は違えども、同一人物。瞬時に知れた。
知識にあった見世物とは、やっぱり違った。でも―――見世物には違いなかった。
人の姿を忠実に再現していた目の前の彼女たちは、交わりの経験などまだなかったわたしの下腹部を、たちまち疼かせた。
―――と、
彼女たち、どことなく自分に似てない……?
ふとわいた思惟が、不思議と淫心を大いにあおっていった。
彼女たちの下に敷かれたござの端に、ダンボールでつくった札が立っていた。
『つり橋』
そう書かれていた。
合体の型は四十八ある。―――知識はあった。
今、彼女たちがさらしているのは、『つり橋』という名前の、その一つなのだろう。
湿った地面の土の臭いを嗅ぎながら、ここでもわたしは時を失った。熱は下腹部にとどまらず、全身を包んでいた。
重なる二対の情景は、全部で五つだったようだ。
それというのも、五つ目の展示の横の黒幕に、
御出口は此の裏―――。
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