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わたしが今まで持っていたイメージは、大きくとも五〇センチほどだった。しかし、人物キャラクターたちは、一メートルあるかないかといった背丈であり、だからこそ、はじめに目に入った少女人形を、生きた子どもと見間違えた。
断言はできないが、座ったり横になったりの体勢でいた動物たちも、おそらく立たせれば、同程度の背丈になるだろう。
―――と、疑問がわいた。
これだけのサイズだと、迫力はあるとしても、非常に操りにくいのではないか……。
誰がつくったものなのか……。
これだけの完成度。趣味の域とは思えない。
名のある人形作家の手によるものか……。
でも、店の彼女に尋ねようなどとは思わなかった。なぜ、こんな大きさで、どうしてここへ飾っているのかも。
だいたい、わたしは話し好きというほうではない。だから、なまじ問いを投げ、もし長い説明でも返ってきてしまった日には、せかっくの休息時間が苦痛のそれとなってしまう。
と、
“カタッ”
―――壁側から。
そこには棚と、その上に立つ王女人形しかない。
店内に空気の流れはなかったし、だいたい張った糸で吊るされる彼女が、なにかの拍子でずれるとも思えない。
しかし―――さっきまで見ていた彼女の立ち姿と、どことなく違っているような……。
そして両の瞳の焦点も、位置を変えたような……。私に向けて……。
―――まさか。
苦笑で打ち消した。
わたしはなにを想像しているのか……。
なんとなく落ち着かなくなった気持ちを鎮めるため、お冷を一口含み、ワインレッドのビロード製シートの背にもたれた。沈むような柔らかさの座席は、わたしほどの体型であれば、三人は優に並ぶことができるぐらいゆったりしたものだった。
“カーン カーン カーン カーン―――”
踏切を渡り終えてすぐに響いた警報音が、ふけっていた過去の景色を終了させた。
もうすぐ。―――張った心中の声で、疲労の足を元気づけた。
客が着いていなければ、少女人形のテーブルを必ず選んだ。ロールブラインドのおかげで、客の出入りはそう気にならないと思われたから。
そもそも、いついっても客は少なく、目的のテーブルをあきらめたのは、今までに一度だけだった。
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