【九沓・2】

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 ―――サア、こんなネエちゃん見たこたァない! キレイなお顔して、ど~してカラダはこんな奇妙なものになってしまったのか!? 実を申しますとこのネエちゃん、昔からヘビを食べるのが大好きという悪食女! するとあら不思議! 思春期のころからみるみるカラダがヘビの鱗で覆われてきた! これを我々は後天的異形と呼んでいる! サア、奇妙奇天烈にして怖気をふるう、医者も見放した女のカラダが、これからまさに皆さんの目の前に現れます! はたしてヒトかケモノか!? サア、もうすぐはじまる! 見世物小屋! どうぞどうぞ!―――  木戸番の威勢のいい啖呵に引かれるようにしてやってきた見世物小屋は、交差した参道の一角に、ずいぶん大きな掘建て小屋の形であった。  けばけばしく飾り立てられた正面には、 《もぐら娘》《ヘビ女》《骨なし人間》《秘境からきた野人》  などと書かれた垂れ幕がかけられ、その前には結構な人間がたむろしている。  珍しさから眺めている、というより、入るか入らないか決めかねている、といったふうの者がほとんどのように見えた。  裸電球らしい明りが満ちる小屋内にも多くの客が入っているのが、開いた入口から覗けた。 「後天的異形なんて、本当にいるんだろうか?」  真面目くさった顔をよこした美緒に、 「いるわけないでしょ」  あきれた口を返した。 「わからないわよ。世の中広いんだから、そんな体質の人がいてもおかしかない。ヘビ食べてっていうのは嘘っぱちかもしれないけど、成長するうちに、もしかしたらそんな見目形になっちゃう人がいるかも」 「どういう体質よ」 「味奈子だって結婚できた不思議な世の中よ。いないとはいいきれないんじゃない?」 「はいはい」 「ねえ、入ってみない?」 「えっ!?」 「大丈夫よ。どう見てもここ、入っちゃいけない見世物小屋じゃない」 「……入っちゃいけない見世物小屋?」 「あら、知らなかった? この都市伝説、全国的なものじゃなかったんだ。あたしの地元近辺じゃ有名なんだけど」 「有名だろうがなかろうが、その小屋であろうがなかろうが、イヤよ。これから食事いくのよ。絶対食欲失くすもん」 「でも、見世物小屋ってもう少ないし、いつなくなっちゃうかわからないのよ」
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