山の主

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 「山の主が話し掛けてくるだって?」  オレは怪訝な顔で、田沢の顔を見た。  「う、うん。じいちゃんが言ってた。  この山に登ったら、山の主が、話し掛けてくるかも知れないって」  田沢がうなずく。  オレは周囲を見回した。  今いる場所は、里山の中腹あたりである。  小さな空き地となっていて、山菜を採りに来たオレと田沢は、その辺りに転がっている岩に腰を降ろし、休憩をしていたのだ。  この里山は、田沢の祖父が所有しており、山菜取りの許可はもらっている。  「山の主って何だ?」  「知らない。  でも、それは良くないことだから、山の主が話し掛けてきたら、すぐに逃げろってじいちゃんが言ってた」  ……山の怪異とか、そう言う怖い話なのだろうか?   田沢の説明がヘタクソなため、どうにもピンとこなかった。  「昔さ、じいちゃんの伯父さんにあたる人が、山の主に話し掛けられても、逃げずに返事をしたらしいんだ。  そしたら、山に呑み込まれたって言ってた。  山の主は、怪物なのかも?」  「……もしかして、あれかな」  「分かるの?」  オレがつぶやくと、田沢が驚いたような顔になった。
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