飯嶌貴利はレモネード男子

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「……人生変わる人だって居るんだよ」 「はい?」飯嶌は振り向いた。 「好きな物に出逢って、それが例え架空のキャラクターだったとしても 物語の中で話すその子の言葉や表情に心が救われる人とか居るんだよ。私がそうだったから…」 「……」飯嶌は黙って私を見てる。 『やーい、デブ!大根足!臭いからどっか行けよ!』 『臭くないよ!ま、毎日お風呂入ってるもん!』 『じゃあ何でお前そんな太ってんだよ?他の女子は皆細いのにさ。あっ、そういやお前最近よく隣のクラスの岡田(おかだ)見に行ったりしてんだって?なに?好きなの?』 『そっ、それは…』 『あははっ!マジ!?岡田がお前なんか相手にするわけないじゃん!あいつ女子から超人気だし。……まさかお前、自分の事可愛いとか思ってんの?そしたらヤバくね?だってお前超ブスじゃん、デブブス』 「……小学生の頃 同じクラスの子に虐められたりしてたの。そのせいで学校は不登校になった。何にも楽しくなくてカーテン閉め切った真っ暗な部屋で毎日泣いてて……そんな時にお母さんが買ってきてくれた少年ニャンプでヒロマカに出会った。それまでずっと漫画なんて読んだ事なかったけど知らなかった世界にこんなに心を動かしてくれる場所があったんだって初めて感動して それでやっと高三の卒業間際に学校に通えるようになった。学校に通えてた時間はとても短かったけど 今まで一人きりで過ごしてたどの時間よりも凄く楽しかった。あぁ 太陽の光りってこんなに暖かいものだったんだなって思い出せたの」 「……」 「飯嶌君が意味が分からないって言う気持ちも分からなくないよ?だって世界中の誰もが漫画やアニメが好きなわけじゃないから。でもね、私みたいに漫画やアニメに救われた人が他にもたくさん居ると思うの。だから簡単にくだらないとかそんな風には言ってほしくない」 「……言い過ぎてすみませんでした」 飯嶌は謝った。私は笑った。「良いよ」って許してあげた。
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