06 ディアモンテ公爵による証言

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06 ディアモンテ公爵による証言

 娘が姿を眩ませて一週間が経ちました。  妻は日に日に痩せ細り、使用人たちが言うには食事も十分に取っていないようです。愛犬もすっかり元気を失くして終日ソファのそばで寝ています。すべて私の不甲斐なさ故でしょうか。  娘ララは決して私たちを困らせるような子供ではありませんでした。自分の娘が可愛いと思うのはすべての親に共通する性分だと思いますが、贔屓目に見てもララは天使のような子供でした。  だから私は反対だったのです。  大切な一人娘がフィルガルド・デ・アルトン王子に嫁ぐことに。自国の王子を貶めるつもりはありませんが、彼に関する様々な噂は私の耳にも届いていました。なんといっても気になるのは、あのウェリントン家の令息と交友があることです。  ポール・ウェリントンといえば、かの有名なバーディス・ウェリントンの息子です。バーディスは私のアカデミーの同期でもありますが、彼は昔から女遊びの激しい男でした。そして噂によれば、その手癖の悪さはしっかりと息子にも遺伝しているようなのです。  そんな男と好んで遊ぶ王子が、まともな感性を持ち合わせているとは思えません。私の親心は、きっと娘を持つ父親ならば皆、理解出来るものでしょう。 「ララに関する情報は何か見つかったか?」  私は廊下ですれ違ったメイド長に尋ねました。  メイド長は残念そうに首を振るだけです。 「所持金は少なかったはずだ。もう一週間になるぞ……そろそろ国外も視野に入れて捜索するべきだろうか?」 「もう少しお待ちになっても良いかもしれません。というのも、どうやら王太子殿下もお嬢様を探しているようでして……」 「なんだって!?」  私は思わず大きな声を出してしまいました。 「どうして王子がララを探すんだ?彼は娘に婚約破棄を言い渡した男だぞ?今更いったい何の用があるって言うんだ……!」 「それがですね、旦那様」  メイド長は言いにくそうに目を泳がせます。私が催促するとモゴモゴと数秒口を動かした末に、やっと口を開きました。 「婚約破棄はお嬢様の方から言い渡したようなのです。王宮に勤める甥から聞いた話では、王子と口論の末にそのような結果になったと………」 「そんな……いったいララの身に何があったんだ?君も知っての通り、ララは決して自分から離縁を申し立てるような娘ではない。妻に似て貞淑で控えめな性格で……」 「旦那様……」  私はショックを受けていました。  一人では受け止めきれないほどのショックを。  そっとメイド長の肩に手を置きます。長い間ディアモンテ家に仕える彼女はそれだけで察したようで、ハッとしたように私から目を逸らしました。 「良いかい、モーガン。今日は私の部屋に来て欲しいんだ」 「しかし、奥様が……」 「妻は何も言わんよ。それが彼女の最も評価出来るポイントなんだから。こんな気持ちでは一人で眠れない、どうか付き合ってくれ」  モーガンはまだ何か言いたそうな素振りを見せましたが、別に構いません。私は二つの役目を持つメイド長の肩を叩いてその場を去りました。
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