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その日を境に日奈の日常は変化した。
身に覚えのない言い掛かりをつけられる事が徐々に増えたのだ。
ある日は、母の大切にしている指輪が机の中に入っていたせいで、勝手に持ち出したと叱られた。
彼女は知らないと言ったが、机の中にあったという事実は眼前にある。
「お母さん、お姉ちゃんを責めないで! きっと何かの間違いだから……お姉ちゃんがそんな事するはずないもん!」
責められる日奈の前に月奈が割って入り涙ながらに言うと、母親の目に涙が浮かんだ。
「双子なのに、なんでこんなに違うの……月奈は優しい子になったのに、日奈は泥棒な上に嘘つきだなんて……」
「違う! 私、本当に何もしてない!!」
必死で訴えるが、母親は聞く耳を持たない。
「これがお祖母ちゃんの形見だって知っているでしょう。大事にしてるって知ってるでしょ……」
母親が泣き崩れると、月奈は抱きつくようにして慰めの言葉をかけた。
「知ってるよ。だからお姉ちゃんがそんな事するわけない。きっと何か……何かの間違いだよ」
日奈は呆然と、抱き合いながら泣く二人を見る。
何故こんな事が起きたのかはわからなかったけれど、自分が何を言っても母に信じてもらえない事だけは感じ取り、悲しみと悔しさに口を噤んだ。
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