田坂家の娘たち

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高校生になったある日、学校からの帰り道のことだ。 マンションの横を通る細道にひとけはなかった。 学校や家では誰かの耳目があり、きっと本当のことを言ってはくれないだろう。 日奈は堪えきれずに訊ねた。 「月奈……もしかしてお姉ちゃんのこと、嫌い?」 それは酷く恐ろしい質問。 唯一の味方さえ失うかも知れない、けれど真実が分かるかも知れない質問だ。 「そんなわけないじゃない。大好きだよ」 月奈は曇りの一切ない笑顔を向けた。 空には黒い雲が速い風に乗ってすっと流れている。 「そう……だよね、月奈が私を陥れるなんてありえないよね」 日奈は安堵したような、それでいて胸に引っ掛かるような気持ちで歪に笑う。 月奈は晴れやかに微笑んだ。 「日奈は私の大好きな、誰からも信じてもらえない、哀れで惨めなお姉ちゃんだもん」 「…………え……?」 いきなりの言葉に、日奈は表情を凍らせて動きを止めた。
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